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本業ブックローグ

『ギョッとする江戸の絵画』羽鳥書店

2010年05月26日

新・奇想の系譜!

『ギョッとする江戸の絵画』
辻 惟雄/羽鳥書店/2940円(税込)

ギョッとする江戸の絵画

A5判/240ページ
デザイン:馬面俊之

 

 2010年春、東京の表参道駅構内で、「奇想の系譜」と大きくキャッチコピーがつけられた広告が、ほとんどの円柱にぐるりと貼りめぐらされていた期間がありました。

 「奇想の系譜!」思わずギョッとしてファッション関係の広告だったことしか記憶に残っていないのですが、そこを通りすぎる人々の中には、内心ニヤリとした人もきっといたことでしょう。

 岩佐又兵衛・狩野山雪・曾我蕭白・伊藤若冲・長沢蘆雪・歌川国芳——今や、あまりにメジャーとなった江戸の画家たちは、1970年刊行の『奇想の系譜』(美術出版社)において、辻惟雄氏によって表舞台に送りだされました。その衝撃は、美術の世界よりもむしろ、当時先端で活躍していたデザイナーや文化人によって大きく受けとめられ、さまざまな分野に少なからず影響を及ぼしました。

 

 以後40年、「新・奇想の系譜」とも呼べる本書は、2006年秋に放送されたNHK番組「知るを楽しむ この人この世界」のテキストとして刊行された冊子をベースにして、アーティスト・村上隆氏との対談を加え、新たに書籍化したものです。先の6人に白隠と葛飾北斎を加えた総勢8人の刺激にみちた世界を、多くの図版とともに平易な語り口で存分に伝えます。

 

 『奇想の系譜』の影響を受け「スーパーフラット宣言」にいたった村上隆氏は、そもそもどのようにして『奇想の系譜』に出会い、そして辻惟雄氏本人と出会ったのか。笑いにつつまれた対談は、江戸の奇想と現代アートとの濃密な関係を浮き彫りにするエピソードが満載です。

 蕭白が描く唐獅子の目玉を「自転車のベルのような」と譬えてしまう辻節を、ぜひご堪能ください。


  ◆編集◆矢吹有鼓
東京大学出版会で編集者・羽鳥について9年ほど経験を積み、2009年4月、羽鳥書店を一緒に創業。羽鳥書店の刊行分野である法律・美術・人文書をそれぞれに編集し、小さな出版社をキリモリ中。2010年4月現在、松丸本舗「高山宏の本棚」でも紹介されている田中純氏の近刊著『イメージの自然史』を編集しており、本年後半に向けては、デザイナーや現代作家の作品集を準備する一方で、高山宏『新人文感覚』なる大著の編集を地道に進めている。