のびやかに生い茂るコンテンポラリーアートの温室
NADiff a/p/a/r/t[前編]
書店の森たんけん倶楽部=原稿/倉本さおり、写真/前田学

昔ながらのアパートや民家が立ち並ぶ路地裏に突如として出現するガラス張りの建造物。周囲とは似ても似つかない、どう見ても異質な存在のはずだが、外から眺めているとなぜか居心地がよさそうに映る。
かつて表参道にあった洋書店兼ギャラリー「ナディッフ」が、ここ「NADiff a/p/a/r/t」として恵比寿に再オープンしたのが2008年。現代美術を志す者にとって、取り替えのきかない役割を担っていることは今も変わらない。
だが、スノッブな雰囲気とはまったくの無縁。前身が、かの伝説的な美術書店「アール・ヴィヴァン」であるとか、そんな肩書なぞどこ吹く風、店内は明るい開放感にあふれ、訪れる者をゆるやかに招き入れる。そこで来訪者たちは、細胞がざわざわと活発に動き出すような感覚に見舞われるのだ。

物差しでは測れない。アートの体感温度

書棚の一角にある2畳ほどのスペースには、常時さまざまな現代アーティストの作品が展示されている。これは「音体パフォーマー」ホナガヨウコの作品。テレビにも観客にも、なぜかぬいぐるみの被り物が施される実験的空間。


ギャラリーショップも兼ねているため、ポストカードからバッグ、Tシャツにいたるまで様々な作品を販売。中には特定のアートフェスティバルでしか手に入らないものも。

地下1F・NADiff galleryでは年間約10本の企画展示を展開。訪れるたびにまったく異なる空間に出会える。これは稲垣智子と植松琢麿によるユニット「稲を植える人」のインスタレーション作品。

森の主たる野崎さん。「個人的にいちばんお気に入り」だという、ほかではめったにお目にかかれないヴィンテージ本が眠る棚の前で撮影。
NADiffの名は“New Art Diffusion”に由来する。同時代のアートの普及。その徹底した姿勢とは裏腹に、押しつけがましい気負いや頭でっかちなイデオロギーはどこからも感じられない。それはチーフバイヤーの野崎さんの言葉にも表れている。
「現代美術というのは雲をつかむようなもの。でもなんとかして知りたい、という気持ちでしか迫れない。いわば『NADiff』とは何か、ということを常に模索しながらやっている結果がこの姿なんですよ。だからきっちりした棚もあるし雑多な平台もあるし展示もあるしポストカードもある。それを、いわゆるブックカフェのようなものもなかった時代からずっと続けているんです」
トレンドを追い求めるのではない、もっと真摯で原初的な感覚。それがこの森の不思議な居心地のよさにつながるのかもしれない。
※後編につづく

NADiff a/p/a/r/t
[アクセス] JR恵比寿駅東口から徒歩6分
[営業時間] 12時~20時
[定休日] なし
[TEL] 03-3446-4977


















