一冊の声とじっくり向き合える、ツリーハウスへようこそ
みみをすます書店[前編]
書店の森たんけん倶楽部=原稿/倉本さおり、写真/前田学

新御茶ノ水。入口がある1Fで待ち受けるのは、旬のぎっしり詰まった有機栽培の果物や野菜たち。B1Fや2Fにはオーガニック石鹸やナプキンなどの生活雑貨、やさしい色合いのドライフルーツやハーブティーがずらりと並ぶ。——エコロジーショップGAIA・3F。「みみをすます書店」という、ちょっと変わった名前の森が、都心のビルの谷あいからちょこんと顔を覗かせていた。
店名は、谷川俊太郎の詩『みみをすます』に由来。人の言葉や自然の移ろい、時代の振動が生む音にしっかりと耳を傾けるようになりたい。そんな想いが込められた書店から見える風景は、せわしない日々からはちょっと外れた、平らかで穏やかなしあわせに充ちていた。

あたたかで静謐な時間が
五感のすべてを呼び覚ます


細長い階段の壁面いっぱいに設けられた書棚。
大木に絡みつく蔦のごとき趣に魅入られつつ、樹上へと向かう。

開放感のある4Fはカフェ兼ギャラリースペース。
縁のある著者を招いてイベントも行っている。

この森では色とりどりの蝶々も背表紙に吸い寄せられる。
静謐な時間は蜜の味。

カウンターでゆっくりとくつろぎながら本と向き合う。
たちのぼるコーヒーの香りと共に、
豊饒な言葉のささやきが聴こえてくる。
この森のテーマは〈食とからだ〉。しかし、巷を賑わせている流行のダイエット本やブログ発信のレシピ本などの類はほとんど見かけない。
「そんなにたくさんの本はいらないんです」——店長の佐々木さんのシンプルな言葉にドキリとさせられたのは、その言葉が、ふだん我々が置き去りにしている真実をたしかに穿っていたからだ。「たとえばレシピの本って、本当はそんなに買う必要がないですよね。基本的なことをきちんと押さえておけば、あとは自分で対処できる。本当の知識というのは、いつ読んでも通用するもののはず」。
カウンターに腰かけ、しずかに耳を澄ませば、自分にとって一番大事な声が聴こえてくる。「1杯のコーヒーがあって、1冊の本がある。そんなあり方が、この書店にもっともふさわしいですね」

現在の店主の佐々木さん。このやわらかな空間にぴたりと寄り添うような雰囲気が印象的だが、元々はまったく畑違いの仕事に就いていたそう。「働くうちに、自然とここに体が馴染んでしまいました(笑)」
※後編につづく

オーガニックブックス みみをすます書店
[アクセス]地下鉄新御茶ノ水駅より徒歩1分
[営業時間]11時〜20時(月〜土)、12時〜19時(日・祝)
[定休日] なし
[住所] 東京都千代田区神田駿河台3-3-13 GAIA3F
[TEL] 03-3219-4865
[HP] http://www.gaia-ochanomizu.co.jp


















