音、人、本。ひとときの優雅が織りなすモザイク
Brooklyn Parlor[後編]
書店の森たんけん倶楽部=原稿/倉本さおり、写真/猪又直之
ブルーノートジャパンがプロデュースする、人と本を結ぶ新しい空間・Brooklyn Parlor。この森の核となるのは、BACHの幅允孝氏によってセグメント分けされた風変りな本棚。本は“商品”である前に“読み物”——そんなつぶやきが木立から聞こえてきそうだ。

つぶやきが芽を吹き、枝を広げ、十人十色の実をつける


「よのなか」「いろいろ考えてる」「働こうかな」「不条理!」。この店の本棚の性格を最もよく表しているのは、なんといってもその独特のカテゴライズだろう。
「なんとも味のある字体で、しかも目を引くタイトルですよね(笑)。棚のセグメント分けは最初に幅さんが考えてくれたもの。その上で、月に1回打ち合わせを行っているんです。ただ、ある程度の方向性が決まったら、あとはほとんど自由に選ばせてもらってます。もちろん、アルバイトの子たちも積極的に選んでくれてますよ」

壁一面を贅沢に彩る据え付けの本棚。
遠くから愛でるもよし、背中で気配を味わうもよし。

店内の中央に位置するソファの後ろにも本棚。
実はオープン当初からあったものではなく、
この店に流れる空気感に合わせて新たに配置されたもの。
「実際の棚出しは、ただ単に本が好きなスタッフ達が集まって相談しながらやってくれているんですよ。だからプロが選んでいるわけではないし、路線がきちんと統一されているわけでもない。セグメントに従いつつも、いろんなスタッフがあれこれ思案しながら、いろんな視点でもって棚に収めているだけ。でも、それでいいと思うんです。いろんなお客さんがいるし、そこにいろんな好みがある。一人の色に染め上げたものより、いろんな色が混じりあったもののほうが魅力的ですから」

知る人ぞ知る、ファーブルの“きのこ図版”446ページ。
こんな大型本をじっくりつまみにできるのもこの店ならではの楽しみ方。

スタッフのひとり、近江さんの最近のお気に入りの棚は「植物の本」。
もちろん中身は日々枝分かれし、さまざまな色の葉を茂らせる。

洋書や写真集が比較的多い理由は
「アルコールを飲んでる時はあまり字を読みたくないだろうから。
けっしてカッコつけてるわけじゃないんです(笑)」(松内さん)

自由で孤独、可笑しくてもの哀しい国・
アメリカに想いを馳せる

『ただひたすらのアナーキー』
ウディ・アレン/河出書房新社/¥1,995
うだつのあがらない貧乏作家、壊滅的な一軒家と格闘する夫婦、落ちぶれた大物プロデューサーなど、哀愁漂う18の人生を茶目っけたっぷりに活写した短編集。これでもかというくらいギャグとユーモア、アイロニーを詰め込み、見事に着地してみせる手腕はさすが。「ブルックリンも含め、ニューヨーク全体に流れている空気感が非常にうまく描かれている作品。ウディ・アレンのファンでなくても面白いですよ」(松内さん)

『THE AMERICANS』
Robert Frank/Pantheon/¥18, 000
「オープンした頃からこの店の看板として扱っている一冊。これを見ると、当時を思い出してまた新鮮な気持ちになれますね」(松内さん)。後世のフォトグラファーに多大なる影響を与えたロバート・フランクの伝説の写真集。1955年から56年にかけて切り取られた、なにげなくも美しい情景の数々は、半世紀過ぎた今もなお“自由で哀しいアメリカ”を雄弁に物語っている。

Brooklyn Parlor
[アクセス]地下鉄新宿三丁目駅から徒歩すぐ
[営業時間] 11時30分〜23時30分
[定休日] 不定休
[住所] 東京都新宿区新宿3-1-26 新宿マルイ アネックスB1F
[TEL] 03-6457-7763
[HP] http://www.brooklynparlor.co.jp/

















