手力男かくやと鏡開きけり 京極杜藻
今日は鏡開きですね。力もちというと、角界は理事選の立候補で紛糾していますが、丸く収めて、なにより力強い取り組みを見たいと思います。
さて、イシス編集学校21期[破]では、いよいよ四つめのお稽古「プランニング編集術」に突入しています。今までの稽古で学んだ編集技法を駆使して、企画・プランニングの方法に挑んでいます。このプランニング編集術では、地域に関連したさまざまな風俗や習慣、暮らしを題材にします。そんな風習にちなんだ話題をひとつ。
鏡開きというと、正月に歳神に供え飾った鏡餅を食べる祝儀で、十一日にするところが多いようです。松の内が15日の地方では20日、京都では4日に行われるとか。お正月の暮らし方をみても、各地方、各町、各家庭でもそれぞれ固有のものがありますね。
たとえば、お雑煮もさまざまです。すましか味噌か。餅は角か丸か。焼くか焼かないかなど。みなさんのご家庭ではどんなお雑煮でしょうか。香川県では餡入り丸餅だそうです。なかに入れる具も千差万別ですよね。国土地理院から、日本全国お雑煮マップなるものも発表されています。
http://www.gsi.go.jp/WNEW/LATEST/special96-97-szouni.htm

丸餅や味噌仕立は京都文化、角餅やすまし仕立は江戸文化の影響だといいます。西日本ですまし仕立の地域は参勤交代でもたらされた文化と古風の丸餅を融合させたとも言われています。
ボクの家は元旦は白味噌ですが、二日はすましの焼雑煮。そして、三日は、また白味噌です。両親の実家の風習をそれぞれ組み合わせたようです。ちょっとした正月の風物にも、文化的な背景があったり、いろいろと変化があるのがとても面白いと思います。お雑煮の起源なども調べると「日本という方法」に繋がるものがあるかもしれませんね。
ところで、寺田寅彦が昭和十年に書いた随筆(「新年雜俎」)に以下のような文章がありました。
自分の子供らが今の自分ぐらいの年配になるころには、
ことによるともう正月に雑煮を食うという習慣もおお
かた忘れられて、そうしてそのころの年取った随筆家が
「雑煮の追憶」でも一九六五年あたりの新年号に書くこ
とになるかもしれない。
今年は二〇一〇年。寅彦が憂慮した三十年後からはるか超えて、七十五年もたとうとしていますが、いまだに「うちは白味噌で、」とか「我が家はすまし。焼餅以外は考えられない。」とか話題にされています。
この随筆では、寅彦が正月の元旦や二日に行っていた近所への年賀の様子を題材に雑煮の味の違いについても言及しています。先祖のしきたりに従ってだんだんに伝えてきた方法で調理され、それが次第次第にダイヴァージして変異してきたのではないかといっています。
他家の雑煮を食うときに「わが家」と「他家」というもの
の間に存するかっきりした隔たりを瞬間の味覚に翻訳して
味わうのである。
土佐の貧乏士族の家の雑煮に育った寅彦には、東京へ出てきて汁粉屋などで食べた雑煮は清汁が水っぽくて、頭にへばりついている雑煮とは全く別物の食物としか思われなかったようです。
日々の暮らし中で培ってきたものの影響はとても大きいですね。あらためて、自分のまわりの生活の些細なことがらの云われや背後にあるものを考えてみると面白い発見があるかもしれません。
大勢の子を育て来し雑煮かな 高浜虚子

「新年雜俎」は、寺田寅彦全集〈第4巻〉随筆4 生活・紀行(岩波書店)
に収録されています。

和漢三才図会の「玄猪」にも丸餅、角餅が並んでいます。(季ちがいですが)
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イシス編集学校21期[破]番匠 塩田克博

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