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歴史小僧書店

第10回 みんな名古屋に行こみゃあ――開府400年祭と徳川宗春

2010年07月12日

吉宗と宗春 (文春文庫) 尾張春風伝〈上〉 (幻冬舎文庫) 名古屋開府400年記念誌 尾張名古屋大百科

 

 ご存知でした? 今年は「名古屋開府400周年」。荒俣宏氏をゼネラルコーディネーターに迎え、名古屋では連日盛りだくさんのイベントが……のはずなのですが、残念ながら奈良遷都1300年祭や龍馬ブームのあおりを受けてか、愛知県外の人には400周年の熱はあまり伝わってきていません(もしかしたら県内でも?)。

 長いちょんまげが特徴の公式マスコットキャラクター「はち丸」くんも大人気。連日名古屋城や名古屋市内の各イベント会場に引っ張りだこなのですが……。うーん、こちらもせんとくんやひこにゃんほどには届いてきません。

 

 さて、この開府400年は、正確にいうと名古屋城が完成し、それ以前の中心地だった清須から町が移転してきた1610(慶長15)年から数えた年月になります。

 江戸幕府開府後、徳川家康は天領となった名古屋の地に4男の松平忠吉を入封させますが、あえなく死去。その後9男である徳川義直を尾張藩藩主とし、名古屋の地に巨大な城郭の建造を命じます。それは「天下普請」と呼ばれる国家プロジェクトとして発令され、諸大名が人と金を出して急ピッチで建築が進みました。で、1610年に無事完成したというわけです。

 その後、幕末まで尾張藩は徳川御三家の一つとして存在感を見せるのですが、その歴史の中で、名古屋を語るに欠かせない人物が登場します。それが「徳川宗春」。尾張藩7代目の藩主です。

 

 この徳川宗春という人、現在の名古屋人気質の生みの親ともいわれています。

 それでは名古屋人気質とは? デビューしたてのタモさんがよくネタにしていましたが、「派手好き」なのに「堅実家」、そして「内弁慶」といったところが特徴でしょうか。

 「派手好き」なのは、名古屋城の金のしゃちほこや豪華な嫁入り道具に象徴的。「見栄っ張り」と言い替えてもいいでしょう。一方で、「質素」で「倹約家」の一面も併せ持つ。さらには「内弁慶」――東京と大阪へのコンプレックスが強く、全国に打って出るというのが苦手のよう。この性格は、プロ野球の中日ドラゴンズが引き継いでいますね。星野さんが監督の頃、「うちの選手は奥手すぎる。俺が一番有名でどうするんだ!」っていうようなことをぼやいてましたし。

 

 しかしですよ、歴史的に見ると、名古屋からは織田信長と豊臣秀吉という二大天下人が生まれているのです。それ以外にも、前田利家や加藤清正らの戦国大名も輩出している。戦国時代には、おおらかで気宇壮大な気質があったようです。

 それがどこで屈折したのか? そのターニングポイントとなったのが徳川宗春。

 宗春が藩主だったのは、「暴れん坊将軍」でお馴染みの8代将軍・徳川吉宗の時代。吉宗というと享保の改革で質素倹約を推進したことで有名ですが、宗春はことごとくそれに対抗した政策を実行します。

 名古屋東照宮の祭礼を改革以前の盛大なものに戻し、芝居を奨励、遊廓も公認。城下町を一大商業都市へと変革させました。宗春自身も派手好きで、藩主になって初めて国入りするさいのファッションは、黒ずくめの装束に浅黄色の頭巾をかぶるという奇抜な出で立ちでした。彼に率いられた大名行列も、花笠をかぶり、竜や虎が描かれた羽織を身に付けるという異様な一行だったようです。

 こうした開放的な政策や、宗春のパフォーマンスは、封建社会では異質な、彼の自由主義的なポリシーが背景にありました。「法令が多すぎると人は萎縮してしまう」「上に立つ人間が好き嫌いを押しつけてはならない」という彼自身の言葉も残されています。宗春の開放的な政策によって、名古屋城下は自由闊達な空気に満ちあふれ、全国から商人と富が流れ込んだのです。

 

 しかし、バブル経済というのはどこかで弾けるのが世の常。宗春が藩主になって5年後には、早くも藩財政は悪化し、開放政策のために領民の風紀は乱れていきます。ついには、将軍吉宗の命によって宗春は蟄居処分となり、生涯幽閉の身となってしまいました。

 宗春の退陣を見届けた名古屋の庶民は、「出る杭は打たれる」ということわざを骨身で感じたことでしょう。その結果、目新しいものをおそれ、排他的で内向きな気質が生まれました。つまり、「派手好き」なのに「堅実」で「内弁慶」な名古屋人気質は、宗春の奇抜なキャラクターとその後の弾圧という、彼の治世の陰陽から生み出されたものだったのです。

 

 そういった歴史を知ると、ほら、普段はちょっと付き合いにくいと思っていた名古屋人の性格も、愛嬌が出てきませんか?

 世の中の龍馬ブームに食傷気味な歴史ファンは、是非名古屋に行ってみましょう。夏休み期間は夏祭りなどイベントが盛りだくさん。8月からは芸術祭「あいちトリエンナーレ」も開催されます。

 この夏は、名古屋がめちゃんこおもしろいだがや。

 

 

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奢侈であり明朗闊達な宗春と、質実剛健の人・吉宗。正反対ともいえる2人の名君の対立が、重厚感を持って描かれている。倹約を強いて庶民を苦しめる吉宗の政策に、ことごとく反対する宗春。彼の突飛で自由奔放な行動は、爽快な気持ちよささえある。しかし、次第に権力の魔手が延び……。

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名古屋市出身で、同市名誉市民でもある清水義範。『笑説大名古屋語事典』『やっとかめ!大(でゃあ)名古屋語辞典』(どちらも共著)など名古屋弁に関する著書も多く、豊臣幕府の栄枯盛衰を夢想した擬史『金の鯱』は爆笑必至! 『尾張春風伝』でも、宗春の快男児たる生涯が、深い名古屋愛をともなって描かれている。

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400年祭を記念して制作された名古屋市の公式ハンドブック。名古屋の歴史・文化から、宝物、食文化、そして現代の産業・政治・環境問題まで。このごった煮感も名古屋らしい。名古屋の旧跡と観光スポットが記載された折り込みMAPを持って名古屋をめぐろう!